【商品番号】1486 【商品名】冒險ベンちゃん・魔人博士の秘密 【製作者】杉浦茂 【メーカー】新生閣 【発行年】1948(S23)08.15 【サイズ】B6 【ページ数】128P 【備考】オール2色 【状態】並 【状態詳細】表紙回りイタミ(折れ・ヤケ・擦れ・エンピツ書き・背下部3cm欠け)、本文しみ破れ小欠け・3×4cm欠け1カ所・8×5cm欠け1カ所 【最低落札価格】400,000円
【コメント】戦後まもない時期に描かれ、幻とまでいわれていた杉浦茂の書物、発掘。もちろんまんだらけZENBUの出品は今までに一度もなく、初のお目見えとなります。 いつものように研究を進めていたベンちゃんのところに1人の博士が訪れた。名を魔人博士といい2人は話に花を咲かせるのであったが、ある日ベンちゃんが町を歩いていると突然ゴリラが現れ、ベンちゃんたちを襲ってきたのである。なんとか難を逃れた彼は逃げていったゴリラを追走するも取り逃がしてしまうのであった。しかし追いかけ行き着いた先はなんと魔人博士の家。襲い掛かってきたゴリラは魔人博士だと確信したベンちゃんはその正体を暴こうと乗り込んだのであった。 そこで繰り広げられる戦いはいつしか空に広がり壮絶なクライマックスを迎える・・・ あらすじはこんな感じだが、杉浦テイストなのでそこはおもしろおかしなフシギで意味不明なコマが所狭しと描かれ、昭和23年にしてその片鱗を発揮していると感じることができる。しかし同年5月に出版されている文林社「怪魔島探検」のようにハチャメチャな描写は少なく、かくも真面目にストーリー構成を行っているのも何作も繰り返し描いていくこととなるこのベンちゃんに対しての杉浦の思い入れや愛を感じずにはいられない。また絵柄はまだ完成されたものではなく、後のナカムラマンガのベンちゃんと比較してもその違いは明らかでキャラクターの造形や背景一つをとってもまだ杉浦マンガ世界発展途上の段階の作品であることがわかる。 この『冒険ベンちゃん 魔人博士の秘密』は、これ以前に ・『冒険ベンちゃん』(昭和22年11月15日発行) ・『冒険ベンちゃん 魔境アマゾンの探検』(昭和23年3月25日発行) という2作が刊行されており、ベンちゃんシリーズでいうところの3作目にあたる(プランゲ文庫児童書デジタルコレクションより)。 この『魔人博士の秘密』は戦後まもない昭和23年に発行されたことで連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の言論統制による制限で時代劇、チャンバラものの作品は禁止されるという状況下で作られたのがこの作品。それゆえにテーマ性では問題ないと思われる本作が今までゴードン.W.プランゲ文庫のリストでの掲載でしかその存在を知ることができなかったというのはどういうわけなのか。 この時代の杉浦マンガはどれもその絶対数は少ないのだが、この「冒険ベンちゃん」シリーズに関しても例に漏れず本自体の発行部数が少ないのではないかと推測される。発行元の新生閣は「少年少女漫画と読物」でも杉浦と縁のある出版社なのだが、こと単行本の出版事業に関しては小規模であったのではないだろうか。さらに推測すれば、『冒険ベンちゃん』『冒険ベンちゃん 魔境アマゾンの探検』と刊行するも売行きが芳しくなかったのか、もしくは制作費の枯渇による出版数を減少せざるを得なくなったのか・・・。そういった事情から3作目なる本作が極端に出版部数を落とすというのも十分考え得る状況ではないだろうか。 メリーランド大学の書架と今回の1冊の他に一体、何冊がこの世に現存しているのでしょうか。今までの出現の少なさとこの情報源の薄さがこの本の希少性を十二分に証明している。 現在メリーランド大学書架にあるとされる上記ベンちゃんシリーズ3冊はマイクロフィルム化され公共機関にてデジタル資料として閲覧することが可能となったが、実際に自身のコレクションとして手元に残るものではなくあくまで閲覧資料としてのデータとなってしまうのでコレクターの方々は原本を入手できるこの機会をお見逃しなきようご検討ください。
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