【商品番号】1121 【商品名】河童の三平全8巻 【製作者】水木しげる 【メーカー】兎月書房 【サイズ】A5 【ページ数】144P 【状態】並 【状態詳細】1巻-貸本糸綴じ、カバー破れ補修、本文しみ破れ、2巻-貸本糸綴じ、ビニカバ貼付イタミ、本文しみ破れ・テープ補修多数、3巻-貸本糸綴じ、カバーしみ破れ、4巻-糸綴じ跡、カバー全体はがし跡、本文しみ破れ小欠け、ノド割れ、5巻-糸綴じ跡、カバー小欠け、本文しみ破れ小欠け・小ラクガキ、ノド割れ、6巻-貸本糸綴じ、カバーヤケしみ破れ、表紙回りしみ、小口文字書き、本文しみ、7巻-糸綴じ跡、カバー小欠け、本文しみ、8巻-貸本糸綴じ、カバー2-3cm欠け数カ所、本文しみ破れ 【最低落札価格】1,200,000円
【コメント】 1巻-くろすきよじ「髑髏船」/2巻-陽気幽平「消えた森」/3巻-大村功「呪いの小指」/4巻-黒田和夫「俺は死んだ」/7巻-黒田和夫「悪夢の島」/8巻-なるみ寛「吸血婆」併録
○河童の生息する空間にある長老の住まいです。岩と樹木で出来ているだけですが、どんな豪華な住まいよりも魅力的に見えるのは、何千年もかけて醸された自然そのものの素材がもたらすシュールな印象があるからでしょうか
○三平の実家、おじいさんと暮らしている村はずれにある家です。ここを舞台に人間と河童の三平と死神、それにおじいさんの4人がこの巻で遭遇し、物語が始まっていきます
○三平は仮死状態で霊界の入り口まで連れて行かれます。日本のローカルな風景とシュールな異界のシーンが見事にマッチしているのは、水木しげるの才能故でしょう。彼の画は光と影のバランスが絶妙です。しかしこのキノコの世界には影がありません。それ故、余計に波動の高い異界を演出しています
○三平の世界に小人たちが登場します。これも一種の妖怪たちで、後年になると大衆受けのいい大仰なお化けや妖怪キャラが出てきますが、本来水木しげるはこの本に出てくるようなファンタジックなキャラが好みのようでした。見開きの画面一杯に三平と小人たちが整列しています。何でもないシーンですが、縁側の強烈な木目、縁の下と座敷の奥の闇、そこにある三平と小人たちのバランスが、当たり前の風景を決して当たり前でない何かに変換しています。しかしそこに赤青黄色の南瓜を配することで、再び私たちをローカルな日常性に還元します
○刑部狸の登場です。このシーンでは水木しげるの独特なペンタッチが見られます。当時の白土三平もそうでしたが、自在に操る筆圧と、キャラやオブジェの質感を見事な描き回しで仕上げています。この質感表現は後のつげ義春に受けつながれていき、つげはもっとウェットな質感を追求していくことになります
○今は観光地にしかない木製の橋ですが、昭和の40年代位までは田舎には普通にありました。その普通にある橋を昼間からタコが行列をなして直立姿勢で歩いています。顔部分がヘルメットを被ったような感じになっていますので、火星人かとうタコです。本文とは関係のないシーンですが、水木しげる作品に一貫してあるシュールは、妖怪たちを通して、人間界と世界(宇宙)を融合させ、それを可視化(具現化)させるものでした。そこに人智における意味というものは見出せませんが、私たちの何かがそのシュールを通して未知なる世界を感じ取っているため、水木作品には計り知れない魅力を感じるのでしょう
○ここから水木しげるのシュールが発動します。異界と現象界をつなぐ道を表現するにはこの「シュール」を使うしか他にないのです
○ 上のコマは単純な線で背景、船、水面を描いていますが、普通に描いているだけのようですが、それぞれの質感をここまでシンプルな線で表現できるのは水木しげるだけでしょう。下のコマ絵はそれに相反するように、大胆なベタで構成されたオブジェで囲まれた水路を三平が船を漕いでいきます
○猫町の入り口にある空き家です。全く人が来ない森の中の小さな空き家や人跡のない水路にある不思議な空き家など、おそらく妖怪たちが使用していたものでしょうが、その不思議な存在感はき自然の中にあって、異界と現象界をつなぐランドマークのようなものかも知れません
○いよいよ三平は猫町で猫の生息する家に行き着きます。一つ前のページにある猫町の全景は、中国の桃源郷の山水画のようです
○この漫画にはがよく出てきます。肥溜とは畑の土中に、私たちの糞尿を貯めておく桶(壺)のようなものですが、水木作品には必須アイテムのようで、何かにつけて登場し、大体誰かがそこに落ちています。作品ではドロドロの状態のように見えますが、実際はしばらく寝かすことで糞尿は発酵、浄化され、畑の肥やしとなるので、表面は乾いて固い感じに見えますが、内部は水分の多いあまり臭みのない良質の肥料となっています(臭い事は臭いですが、便所の臭さはありません)。これは少年時代にそこに落ちたことのある誰か(私)の実体験から取材しています
z93河童
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